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身近な場所での人材活用術


 去る6月22日に青森市内において、昨年度改正案が成立した『公共工事の品質確保の促進に関する法律』(以下『改正品確法』)に関する勉強会を、青森県の建設関連業4団体,(一社)青森県建設コンサルタント協会,(一社)青森県測量設計業協会,(一社)青森県さく井地質調査業協会,(一社)日本補償コンサルタント協会東北支部青森県部会のご協力をいただき開催いたしました。本稿では、この勉強会の要旨を述べて、本法律の意義を知っていただきたいと思います。

公共工事には無駄が多く財政を圧迫しているという認識の下、公共工事は20年にわたり減り続け,産業として瀕死の状態にありました。業者間では受注競争が激化、倒産・合併が増加しました。「旧品確法」は、このような公共工事市場が縮小する中で過剰な価格競争が起こり、ダンピングまがいの低価格入札が頻発したことにより、公共工事の品質が低下して国民生活に影響を与えるのではないかという危惧の下、平成17年に成立しました。

このような社会環境の中、東日本大震災の発生によって日本がいかに脆弱な自然条件の中にあるかが知らされ、国民の防災に対する意識が変わりました。近い将来発生が予測される大地震、洪水、火山の噴火など、大規模な自然災害から国民の命や財産を守るための国土強靭化対策に、建設業が取り組むことが求められるようになりました。また、同時期にこれまで作り上げた社会資本の老朽化による事故の発生もあり、社会資本の維持管理が国民生活の安全安心に必要だとの意識が高まり、建設業界にかかる期待と責任はますます大きくなってきました。しかし一方で、ただでさえ少子高齢化でどの産業でも人手不足と言われている労働市場で、この業界で働くことの厳しさがあまりに過大に喧伝されたため、この業の次代を引き継ごうと考えている人が減少してきました。この現状を改善し、現在そして将来にわたる公共工事の品質確保を促進することによって、国民の福祉向上、経済の健全な発展に寄与することを目的として、官民一体となって取り組もうという理念の下、今回『改正品確法』が成立しました。

東日本大震災の教訓から防災対策として社会資本整備の必要性が見直され、ようやく公共工事から「無駄な」という形容詞が外される時代が来たのです。しかし、この長きにわたる社会資本への投資不足のツケは、これを支える事業者数の減少・人員の流出・高齢化による人材不足という形で返ってきました。過去の建設業の不況で、工事や業務を施工できる会社が地方から消え、機械や資材を保有している会社が減り、調査・設計・施工・管理に携わる優秀な技術者・技能者を減らしてきてしまったのです。そのため、発注事業量を増やそうとしても、入札が成立しないという事態も起こり始めました。この事態に対処すべく、『改正品確法』に基づいて、今年になって国交省から矢継ぎ早に様々な対応策が提案されています。その大きな柱が「担い手育成」です。

本法の施行によって「担い手育成」の目的で、公共工事に携わる事業者が適正な利潤を得られるような価格を設定し、適正な技術力のある施工者が受注できるような発注方式を採用し、業務にムリやムダのないような計画的な発注、適切な工期設定を行うことが、発注者に責務として与えられました。同時に次代を支える若手や女性技術者を育成し活用する事業者を優遇できるような、発注方式の採用も可としています。また、「担い手育成」のための具体的な施策として、これまでないがしろにされてきた受注者側の労働環境についても、改善する配慮が見られるようになりました。すなわち、発注者は受注者に対して通常業務時間外に打ち合わせを設定しない、土日・祝日・深夜の時間帯に作業をさせるような過剰な負担を強いる業務依頼を行わない等の取り組みも始まり、業界全体の労働の在り方にも変化の兆しが見えるようになりました。このような取り組みが、建設業界から遠ざかっている人材を確保するための、一助になればと期待されています。

加えて『改正品確法』では我々調査・設計を行う事業者にとって画期的な、建設業に準じて「調査及び設計の品質確保」を配慮すべきとの条文が盛り込まれ、これまで表に出てこなかった建設コンサルタントが公共工事の品質確保に重要な位置を占めていることが認知されました。これにより、我々建設コンサルタントは建設業並みの取扱いが保障されたと同時に、品質の良い成果品を定められた工期までに納品することを最大の責務として、技術開発やスキルアップ、人材登用の努力を怠らないこと、地域貢献や災害支援活動にも積極的に参加すること等が求められるようになったと考えられます。

一方、『改正品確法』の運用が本格的に始まり、公共工事に携わる業界の「担い手育成」という施策を打ち出した途端、あらぬ方向から、「人がいなくて仕事ができないような状況ならば、公共工事予算を減らせばよい」という声が上がったとも聞いています。わが国の財政が厳しい状況にあることは理解しますが、ここでまた社会資本への投資を減らせば、高度経済成長期に建設され老朽化した構造物の維持管理もできなくなる上、これまで培ってきた社会資本整備に対するノウハウや技術が後世に伝えきれず、反対に劣化した構造物そのものが国民の生命や財産を脅かす存在にもなりかねません。我々コンサルタントは、この『改正品確法』の精神に則り、良い成果品を納め社会に貢献するとともに、正々堂々と公共工事予算の維持の正当性を訴えて、将来にわたって社会資本整備に協力して行く責任があると考えます。